日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

三人並んで

久しぶりに故郷に帰ってきた。
引越してから、何年経つんだろう。
ってか、町並みが変わり過ぎてて道わかんねーな。
あれ?確か、この辺に酒屋なかったけ?むしろ、駅はもっと小さかったよ。なに、あのデカイ上に高いビル。
いつから、この町は街になってしまったんだ。
あぁ、あの空き地が懐かしいさ。秘密基地、作ったんだ。


久しぶりに帰るって言ったら、公園で待ち合わせになった。
俺たちの秘密基地が在った空き地に出来た大きな公園。噴水もあるし、ブランコとか遊具スペースに芝生も。
都会の真ん中に出来たオアシス。
あー、生き返る。


それにしても、なんだろう。
街が二分化されてるよ。
北地区は工業地区で、南地区は商業地区。昔はそんなに仲悪くなかったし、真ん中に学校があってドッチの子供も一箇所に集まっていたのに。
今では、子供は一目で二種類いるのが解る。


面倒なことが、起きる予感。



工業地区からチャイムが鳴り響き、商業地区では始業のベルが鳴り響く。
まるで、合図すらも喧嘩してるみたいだ。
汚い空に広がる暗黒の煙。
チャイムを合図にゴーグルを引き下げる。
昔は平気だったけど最近ではゴーグルなしには歩けなくなったみたい。
電車から降りた瞬間、眼球に痛みが走ったもんね。
あーあ、何時からこんなに汚い世界になったんだろうね。
今や、植物はドームの中じゃないと育たない。
そうだよね、工業地区と商業地区、仲が悪くもなるか。


商業地区だけを、ドームで覆ってしまったんだもんね。
工業地区の寿命は僅か30年。
生身の人間の体ではそれが限界。そこからは、少しづつパーツを変えていくしかない。
そのうち、体全部が機械になって、工場に吸収されていくんだ。


あの頃は、楽しかったのにな。
三人で、何処までも走っていけたんだ。
三人でいれば、無敵だったんだもん。
手をつないで、遥か先に微かに見える水平線を追いかけてる。
そんな夢みたいな世界に生きていて、それを当たり前だと思っていた愚かで幼かった自分が懐かしい。
あぁ、でも帰ってきたんだ。
この灰色の空と、暗黒の雲が支配する世界に。
だからさ、今度こそ。


三人揃って、この世界にさよならを告げようよ。


あの時は、俺だけが消えてしまったのだから。
今度こそ、皆で太陽の下に行こう。
遥か昔に消えてしまった太陽の欠片を、探しに行こう。
また、手をつないでさ。


あぁ、早く二人が来ないかな。
この公園、なんだか懐かしく思えてきたよ。
俺、ずっとここで待ってるからね。
二人が来るまで、ずっと待ってるから。





世界が滅んだ日
この慰霊碑に刻まれた3247名の魂よ
どうか、安らかに天上の楽園にて待っていておくれ
鎮魂の鐘を鳴らそう


この公園は、その記念。
世界が滅ぶ瞬間に中心地となってしまった
悲しき思い出の土地


世界に、黒い雨が降った日



真っ白な花束を
約束の日に
捧げよう