日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

心に響く音

高らかに、響く音。
鳴り響け、この心の音。


小さなライブハウスの中。
騒がしい人々の期待の声。募る思いが形になるならば、きっとこの狭い空間いっぱいに広がって収まりきらずに弾けてしまうだろう。
白い杖を持つ少年は、邪魔にならないように壁際で一人佇んでいる。周囲を動き回るスタッフは皆少年の顔を知っているのか、何もせずに立ちっぱなしの少年を気遣わしげに眺めていく。


「けーちゃん、疲れない?なんだったら座ってれば?」


「大丈夫です。立ってるほうが振動が体に伝わってきて気持ちいいんです。」



にっこりと微笑んだ少年は、そう言って首を傾げる。



「もしかして、邪魔ですか?」


「まさか。大事なAPを邪魔だなんて言わないわよ。」



そんなやり取りの最中、会場が暗闇に包まれる。
それを待っていたかのように、周囲が歓声に包まれる。
一気に爆発するその高まる感情に、少年は閉じていた瞳をそっと開く。
飛び込んできたのは、光の洪水と乱反射。
久しぶりの視界にキツイはずのその光景が、少年にとっては何よりも待ち望んでいた瞬間だ。



「行くぞぉぉぉぉっ!!」


うぉぉぉぉぉぉぉ!!
いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



爆発した感情は着地点を見極める前に上空に昇華して爆音の叫びとなる。
煽るボーカルに煽られた観客が、腕を高く上げて叫ぶ。
ああ、これがあるから気持ちイイ。足の裏を伝って体に這い上がってきた振動に耐え切れないように、少年は己の細い両腕で体を思いっきり抱きしめる。
飲み込まれる。取り込まれる。
己の存在が消えて、音の一部となっていく錯覚。
巻き込んで引きずり回してかき乱して、そ知らぬふりで離れていく。
傲岸不遜の音楽の王様は、そのまま音の暴力に等しいのに、誰もがその魔力に取り込まれて虜となる。望んだ民衆はそのまま虜囚となったが最後、自由はない。


空間の支配者は、紛れも無く、今目の前で高らかに声を響かせる金色の青年だった。






まだ熱気の残る小さな空間。
とうの昔に吐き出されたはずの熱は、いまだにしぶとく居残ってはチリチリと肌を焦がす。



「で、どうだった?」


「ここ、好き。」


「さいでっか。」



バンドの感想を聞いたのに、返されたのは空間の感想で。何時もの事とは言えちょっと張り合いが足りないと、金色の青年は煙草を咥えたまま笑う。



「K、どうでしたか?」


「うん、俺やっぱりLismさんの音好き。」


「それは何よりですね。」




いい子と少年の頭を撫でる青年は、先ほどまで冷たい眼差しで周囲を睥睨しながらギターを抱えて音を奏でていた。先ほどのギタリストと同一人物とか思えないほどに、今は優しい顔をしている。



「Sahyuさん、片付け終わったっす。」


「ご苦労さん。Ko-jiくん、リーダーがKを独占してるから取り返して。」


「いや、無理っす。俺だって命惜しいんで。」


「可愛くないな。お前、そこは俺の為に命掛けるぐらい言えよ。」



金色の青年は、声を掛けてきた真っ赤な青年に小さく舌を出す。




「リーダー、打ち上げ。Kも一緒に行くだろ?」


「Takaは何処行ったの?」


「先に会場確保に行った。近くの居酒屋。」


「それでHyuyaが残ってる訳ね。Kも一緒に行こうか。」


「行ってもいいんですか?」


「もちろんだよ。皆待ってるみたいだしね。」



顔面に蔦模様を刻んだ青年と紫の青年に挟まれて、少年は笑う。
一歩先を歩く金色の青年と赤い青年。
居酒屋で待ってるであろう二色の青年も、今か今かと到着を待っているだろう。





−後悔はしないけど反省はしろ−
ども、古歌っす。
えーっと・・・反省してます。己の文章構成能力に反省はしてます。
この話は、以前古歌の暗黒物質を断片公開したときに出てきた、目の見えない少年とバンドのお話です。
ちょっと目を通したら自給自足で書きたくなって断片話です。
いや、あのね、この設定結構気に入ってるんだもん。
バンド物は書きたいテーマです。
えーっと、ちなみにこのメンバーは結構細かい設定とか話の流れとか決まってます。一応ネーム的な感じのものは仕上がってます。
もうちょっと細部詰めたら短編代わりに書いてみようかな。
一話内でキチンと話を纏める練習をしようかと思いまして。
夏休み終わって気力が残ってたら、分類して短期集中連載でもしようかと思ってます。


でも、取り合えず夏休み早く終われ。今すぐ終われ、すぐ終われ。
後一週間は休み無いです。タイムカードが真っ黒です。
いっそ何処まで黒くなるか記録に挑戦でもしようかな・・・ふふ。
明日は確実に残業ですけどね。ま。仕事好きだしいいけどさ、いいけどさ。
シゴトタノシイナー。