日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

金曜日の魔法

今日も一日、無事に仕事が終わった。
今日も営業大変だった。熱かったし。つか、いい加減ウチの会社もクールビズを取り入れたほうがいいと思う。時代の流れ読もうよ、お願いだから。


そんな感じで退社します。今日は金曜日なんで、同じ会社の女の子の私服姿が華やかで、鼻の下が伸びます。
男はほら、スーツが戦闘服だからね。
でも、女の子はやっぱり制服を脱いだ後が勝負らしい。いや、俺は制服も好きだけど。むしろ、脱がしたいけど。
なんて思ってたら、横を抜けていった美人が一人。
涼やかな声が、お疲れ様でした。って通り抜けていく。
真っ直ぐに伸びた背中と、自信に満ちた足取り。何よりも、頑張ってる感がまったくない自然体の美しさが、メチャ際立った。


おかしい。
あんな美人、ウチの会社にいたっけ?俺の美人データにも登録されてないぞ。
人の顔を覚える事に掛けては下方向に郡を抜いている俺だけど、美人の顔は一回見たら忘れない、変な自信を持っている。つか、男なら美人が好きなのはこれ必然だし。人間、美しい物に惹かれるのは仕方ないよね、男ならわかるよね?
でも、です。
あんな美人は初めて見た。もしかして会社の人じゃないのか?なんて思ったけど、お疲れ様って言われたし、何よりもここ会社のロビーだし。



「木下、どした?」

「おい、田中。あの美人、誰だ?」



同期の田中は、俺と同じく美人は一度見たら忘れないタイプだ。コイツの場合は主に下半身と思考が直結型だから、余計に忘れない。うん、最低。




「あー、あれね。」

「スゲェ美人じゃん。」

「お前さん、あれは庶務の局だぞ。」

「はい?ほわっと?ぱーどん?りぴーとあふたーみー。」

「最後、違うだろ。」




いやいやいやいやいや・・・え?マジで?
庶務の局ってあれだよね。スッピンで眼鏡掛けて、備品とか貰いに行くとスゲェ怖い顔して睨む人だよね。時々資料製作とかやってもらうけど、受け取りに行くのがスゲェ怖い人だよね?
あの、視線だけで部長を黙らせると有名な人だよね?




「まじでか。」

「まじでだ。」

「化粧品って、スゲェな。」




そりゃね、整った顔はしてたけど、ぶっちゃけ黒ぶちのセンス零な眼鏡にひっつめたお団子頭にスッピンで、しかも目つきは最悪だし、態度も声も半端なく硬い人なのにねぇ。




「ついでにもう一つ。あの局様、俺たちの一期上だぞ。」

「嘘付け。子供が手が掛からなくなって仕事復帰した年齢だぞ?」

「それが嘘。正真正銘、俺たちの一個上の先輩。」




田中の衝撃情報。




「一ヶ月に一回か二回、金曜日に完全武装するって有名らしいな。行く先は誰も知らないし、もしかしたら金持ちのパトロンでもいるんじゃないかって噂だ。」

「へー、マジで人は見かけに寄らないな。」

「何回か先輩が飲みに誘ったけど、一回も参加したことないってさ。もとはデザインチームにいたらしいぜ。で、一ヶ月で自分から庶務に移動を願い出たって話。変わり者で有名みたいだな。」

「田中くんよ、お前はいっつもどこで話仕入れてくんのよ。」

「ほほほ、営業たるもの、耳は二つで足らないのよん。」

「うわ、きもい。」




そんな金曜日。






化粧は、あまり好きじゃない。むしろ、嫌いだ。
だいたい、仕事する上で最低限のメイクは妥協するけれど、ばっちり決めたメイクをしている女の気が知れない。まぁ、向うも向うでスッピンで平気で会社に来る私の気が知れないだろうけど。
もとから、あまり化粧が必要ない性質だった。
隠すほど肌が劣化しているわけでもないし、アイメイクをさっとしてお仕舞い。男から見たら、スッピンにしか見えないだろうけど。
仕事は楽しいけれど、でもデザインチームは忙しすぎた。
もっと暇な仕事に就けば良かった。就職する会社間違えた気分。
だから、庶務に移動できた時はほっとした。
会社では、最低限の収入があればいい。


金曜日、今日は完全武装しないと。
ファンデーションは相変わらず好きじゃないので、そんなに使わない。
眉毛を丹念に描いて、それからアイラインを引く。もとから二重で睫毛も長いから、マスカラは必要ない。シャドウは先日買ったばかりの紫。短く切った付け睫毛は赤と青にカラーリングされた羽根。ついでに、ラインストーンが付いている。
体のラインがぴったり出るパンツに、高いヒール。薄いブルーのシャツに、ジャケットは白。まぁ、これは後から着替えるけれど。
電車の時間がギリギリで、ロビーを急ぎ足で横切ったら、営業の新人が二人居た。
この子達、早く帰らないのかしらね。折角の金曜日なのに。




「お疲れ様。」




いくら私でも、挨拶ぐらいはするってのに。そんなに驚いた顔しないで欲しい。
会社を出て、その足で駅を目指す。
普段使う駅から三つ手前で下車して、目指すのは飲み屋街。
ここは、昔から店を構える老舗の飲み屋が多くて、店の雰囲気も変わっている。
昔ながらの流しのおじさんが居れば、生バンドを入れている店もある。ドラッグクィーンが普通に歩いていて、その隣ではピアニストらしき男性が譜面を片手に歩き去る。
猥雑で、ごちゃっとしてて、最高の雰囲気。




「あら、久しぶりじゃない。なーに、今日はアンタも歌うの?」

「随分じゃない、久しぶりだってのに。」




月に数回、この界隈の全ての店が協賛して、小さなライブが開催される。
私は、そこで歌わせてもらってる。
路地裏で手早く衣装に着替えていれば、ストリップと勘違いしたどこかの親父が下品な口笛を一つ。応じるように高々と足を上げたら、後ろから誰かに頭を叩かれる。
はいはい、女の子は慎みをって言うんでしょ。
そんな私のささやかな楽しみ。
ここは、金曜日の魔法が生きる世界。
そんな、金曜日の夜。














−反省会−

うん、見切り発車はいい加減になる。
でも、古歌です。
なんだこれ。
何が書きたかった自分。
いや、変身って言うか。見せてる自分と見られてる自分。みたいな感じを書きたかっただけでし。書けてないけど。
うーん、最近ネタは浮かぶんだけど、上手いこと言葉になってくれないんだよねぇ。
ぱっとフレーズとか雰囲気は浮かぶんだけど、そこから言葉が流れない。
リハビリ兼ねて、暫くこんな感じで散文でも書こうかと思ってます。