日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

流れる音楽と雑多な人込み、それから油の匂い。

全てが入り混じって形成される路地裏。夜なのに真昼の明るさが再現されるこの場所は、雑多で猥雑で込み合っている。
その空気が、なんとも心地良い。
事務所に使っているビルの三階。鍵は特殊加工されていて、開けられる人間は限られている。この地区では無防備になった方が悪いのだ。
盗まれたくなければ警戒せよ、殺されたくなければ常に背後に気を配え。暗黙のルールとなった理不尽さ。ともかく尊重されるのは個人の責任。何が起ころうとも頼れるのは自分だけ。
そんな中で何でも屋なんて営んでれば、飛び込む依頼は案外後を絶たない。くだらない店同士の喧嘩の仲裁や、夜の蝶からストーカー撃退の依頼を貰ったり、真実の愛を追い求める哀れな男から女の素行調査を依頼されたり、その逆もある。
もちろん、荒事千問と銘打ってるだけあって、時には物騒な依頼だって舞い込む。
それでも生きているのは、そこそこの腕と己の危機回避応力の高さに他ならない。危ない場所からはダッシュで逃げる。もしも逃げられなければ、自分に有利な情報を片っ端から集めて撤退する。
少しは売れた名前のおかげで、最初の頃と比べて喧嘩売ってくる商売敵が減っただけでもありがたいけどね。

「遅い。」
「文句があるなら自分で作れば?」

両腕に抱えた紙袋を事務所の机に乱暴に置く。
いきなり事務所にいらっしゃった美丈夫は、いきなり現れていきなり飯を要求しやがりました。俺一人だと、碌な食事を作らない。
ヘタしたら三食水と煙草と珈琲で済ませるタイプだし。できるだけ美味しい物を食べたいとは思うけど、一人だとその手間と比較して挫折する。

「肉は?」
「んな金が何所にあると思ってんだ。」

荒事を引き受ける上で、装備はそのまま命の値段だ。安物は使えない。あいにく、この世界には弘法筆を選ばずなんて諺は通用しないのだ。命が惜しければ金を惜しむべからず。
背中に背負った刀だって手入れを欠かさないし、常に携帯している銃器だって無限に撃てる訳じゃない。弾も火薬も必要だ。古典SFに出てくる宇宙銃が早く開発されればいいんだろうけど、多分高価過ぎて手が出したくても出せない世界に存在しちゃってるんだろう。

「菜っ葉で力が出るか。」
「体内で動物性たんぱく質に変換しろ。人間根性を出せば出来ないことはないぞ、人外。あ、人間じゃないから無理なのか?」
「まずは貴様から食べてやろうか。」

嫌だね、カニバリズムなんて今時流行らないよ。
目の前でふんぞり返って偉そうに言ってくれちゃう男は、正真正銘の気狂いだ。主食は人間とか言っちゃう程度に可哀相な頭をしている。
どうやら、俺は食料の欄からかろうじて一歩踏み出せているらしい。まぁ、何回か人生の最期を悟りそうになって、だけどね。
なんでも、俺は無造作に食い散らかすには美味しそう過ぎるらしい。嫌な評価だけど、味だけは並以上で、それこそ極上らしい。それが断定されるまでに、首の肉が数回喰い千切られたけどな。

「お前、暇ならそこのイモ、皮剥いてくれる?」

安かったので大量購入したイモ。何を思ったのか背中の刀を下ろしてイモの皮剥きしようとした馬鹿を押しとめて、包丁を持たせる。
大抵の刃物は器用に扱う刃物馬鹿のクセに、なんで包丁だとそんなに危なっかしいのよ。なに?ギャップで演出ですか?

「おい、皮より前に俺の指が血塗れなんだが・・・。」
「お前、もう死ねよ。」

振り回された包丁を寸でのところで避ける。イモは切れないけど人は切れる訳ね。そんなギャップが可愛いわ・・・って、んな訳ないだろう。
なにコイツ、馬鹿なの?死ぬの?死ねば?
逃げ遅れた前髪が少し切れた。俺、エロいから髪伸びるの早いし、あんまり気にしない事にする。海より広い俺の理性と心にワンポイントね。

「もういい。馬鹿は馬鹿らしく馬鹿みたいに床と同化して視界から消えろ馬鹿。」

馬鹿に刃物持たせた俺が馬鹿だった。血塗れの両手を水で濯がせてから、今だ血が滲む指先の手当て。言っても、簡単に消毒して傷テープ貼るだけなんだけどね。

「おい、お前今馬鹿って言いすぎなかったか?」
「気のせいだろ馬鹿。馬鹿なんだから黙ってろ馬鹿。つか死ね馬鹿。」

はい、今度は刀が頭上に降ってきました。
今日の天気は晴れ時々刀。所に寄っては血の雨が降注ぐでしょう。お出かけには白い服を避けて常に背後に気を付けましょうってか。
にしても、反射神経良くなったよなー。昔の俺なら一発で天国行きだったのに。
あ、俺これでも善人だから天国行きは決定だからね。

「はい、召し上がれ。」

無言でがっつく馬鹿を一瞥。ちなみに、俺は珈琲と煙草で結構です。
他人が馬鹿喰いしてると食欲失せる不思議ってね。




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反省会
ってことで古歌です。いや、何が書きたかった自分。しかも題名がどうした自分。一体何をしてるんだ自分。
反省してます。後悔もしてます。勢い重視は自重しようと思います。自嘲もしようと思います。思うだけどしないと思います。
決定的に駄目でスイマセン。
こう、久しぶりに見た夢を再現しようと思ったけど、不思議なぐらいに低い再現率になったって言うトラップ。おかしい・・・ま、小さいことは気にしなーい!