日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

笑う角には福来る?

にっこり笑顔で誰にでも平等に愛想を振りまいて、それから適当な会話と挟む相槌、どんな話でも最期まで耳を傾けて、決して否定はしないこと。
否定も肯定もしないし、俺の意見を言うこともない。
これが、俺の職場での位置を確保するための処世術だと言ったら、アイツラはそろって笑った。
らしくないことを、する。
うん、自分でもそう思う。でもね、俺はアイツラみたいに夢の国で生きてないから。どんなに嫌な事でも、こなさないと生きていけない。まだ、自分の人生を捨てて死んでしまうには、俺は若いと思うのね。それに、面白いんだもん、生きてるのって。
俺は、人間が大好きだ。だから、人間を観察する。
そうやって生きてるうちに、どうすれば受け入れてもらえるのかが理解できるようになった。
一瞬で切り替えられる、便利な俺の外見。
その場所によって切り替えれば、少なくとも迫害されることはないし。
今日も、面白くもつまらなくもない仕事を終わらせて、帰り道。
大きな、オレンジ色したお月様に導かれるまま、いつもの駅よりも三つ先で電車を降りる。
騒がしい街中、ネオンに従って歩けば、沢山の声が掛かる。
どうやら、俺の意思以上に有名人になったらしい。


「タツメ、遅いじゃないですか。」


古びたバーの、いつものカウンター席。マスターに挨拶してれば、伸びた腕が軽々と俺を持ち上げて膝の上に座らせる。いい年した男が、男の膝に座るってのもシュールな光景だと思うんだよ。でも、まるでそれが当たり前みたいに、誰しもが微笑ましいって顔で見てくる。


「ひーめ、今日は珍しいねぇ?なにごと?お仕事大変とかぁ?」
「久しぶりだもんね、織姫が来るの。俺たち毎晩いるって言ってるのに、絶対にこないから。」
「でもでも、織姫様ってば痩せたんじゃない?やっぱりお仕事キツイとか?それとも、自分で思ってる以上にヘラヘラが疲れるとか?ktkr猫かぶり王道コース!!で、攻め要因は?」
「黙れ変態、死ね変態。織姫様に変な知恵付けないでよ、ナチュラル観察するのが好きなんだから。」


五月蠅い。騒がしい。ついでに、耳よりも目が騒がしい。
人間大好きな俺だけど、特に好きなのは綺麗な人間。もちろん、外見の話だよ?男でも女でも、見目麗しい人間ってのは、見ていて幸せな気持ちになれる。恋に恋する女の子が、アイドルにキャーキャー言う心理、俺は理解できるもの。誰だって、目にするなら美しい物体の方が気分いいよね?自分には絶対に体験できない、それこそレベルの違う世界っての?見せ付けられると、楽しくなる。まるで、硝子一枚向こう側な感じ。まぁ、俺は全てに対して常にそれなんだけどね。
もちろん、俺だって努力はしてるさ。一生付き合う自分なんだもん。鏡見るたびに、あぁ醜いなーって思うの嫌だし、不快な気分になるのも嫌。だから、俺は外見だけは努力してる。おかげで、それなりに見れると思うんだよね。


「あ、それ。」


俺を膝に抱っこしてる人の手首、真っ黒い革のブレス。でもね、普通のレザーじゃないの、山猫の毛並みを模した、ちょっとだけ固めの毛皮。ちょっと太めのそれから伸びるシルバーチェーンが、中指のリングと繋がってる。リングには、グルリと一周する蔦模様。紫の細かい石を流し込んでラインを作ってあるから、シルバーリングでも全然浮かない。白い肌の上を這う細しチェーンは、まるで蛇みたいだ。うん、ピッタリ。


「えぇ、ちゃんと付けてますよ。」
「ふふ、やっぱり綺麗だなぁ。この指から手の甲へ流れるライン、俺の思った以上だもの。それにね、ちょっと骨っぽいのも好み。欲を言えば、もう少し白いと良かったな。アルビノ並の白。それから、黒かな。なぁ、ちょっと日に焼けてこない?でも、サロン焼けは駄目ね。」
「でも、それだと髪色が合わなくなりますよ?」
「あ、駄目だよ。その色はお前の色だもん。じゃ、ちょっとシルバー弄るかな。でも、新しいの、する?」


俺、綺麗なもの大好きなんだ。その綺麗に、俺が少しでも関ってるとか、凄くゾクゾクする。セックスよりも何よりも、俺が一番興奮する方法。
誰かの綺麗に、少しでも関係する。
装飾品はもとより、服だって鞄だって作るよ、俺は。少しでも理想の綺麗を作るためなら、俺に出来ないことはないんだって思ったもん。あとはネイルも出来ればいいんだけどなー。


「そうだ、あの子は?」


金色の長い髪と柔らかい白色した肌。瞳が透きとおってて綺麗だった。でも、一番綺麗だったのは、その指先。
真珠みたいな艶やかな色した爪は、芸術品だと思った。
だから、似合いのリングを作ったのに。それから、手袋。アームウォーマー。もうすぐ寒くなるから丁度いいかなって思ったのに。名前は知らないけど、顔は良く覚えてる。パーツは整ってるけど相対的に見ると、そこまで美人でもないって感じな。でも、愛嬌のある懐っこい笑顔が魅力的で、自分の見せ方を良く知ってる子。自分が天然で綺麗でも可愛いでもないって知ってる子は、自分の見せ方も良く知ってると思う。見せるべき場所と、そうでない場所の切り替えが上手いってのかな?


「今日は、いないみたいですね。」
「ふーん…仕方ないか。」


鞄の中で出番の無かった品物を思うけど、それだけ。
綺麗に携わって関係するのは楽しいし興奮するけど、それは強制するものじゃないからね。いくらその人に似合っていても、どれだけ繕ったとしても、強制した綺麗ってのは、どこか歪んでいるもんだし。そんなの、何よりも醜いし汚いし不快だ。
綺麗ってのは、強制して生み出すもんじゃない。協調して生み出すもんだろ。
協調性、コレ大事。


「あ、マスター。俺ファンタグレープ。」


お洒落なバー大好きだけど、俺はお酒呑まないもん。子供みたいだけど、このマスターはそんな俺の姿勢を気に入ったとかで、ファンタを常備してる。
唯一飲むのが俺ぐらいなのにね。マスター、大好きだ。そんなマスターに、俺はお礼を兼ねてベスト作ったけどね。ざ・バーテンダー的なベスト。でも、今日着てるベストも素敵だ。後で、じっくり見せてもらおう。
ここのマスター、これ見よがしにブランド物着るわけじゃないけど、いつも丁寧な仕事してる服なんだよね。


「タツメ、私の話を聞いてますか?」
「全然。」


おーっと、忘れてた。俺を膝抱っこしてくれてるお兄さん。
お兄さんも、凄く素敵なセンスだ。そして、美形だ。


「織姫様、意識飛ばすの得意だよね。」
「やっぱ、地に足着いてないんだよ。織姫だもん。」
「でもさー、織姫って見た目ボンクラなのに、チョーセンスいいよね。平凡だけど非凡なんだよ、すごく。俺、織姫大好き。」
「あ、俺も!!」
「ちょっと、男のクセにキモい。姫ちゃんは、しっかりした女の子がお似合いなんだからね。」


うはー、騒がしい。でも、俺結構好きなんだよね、この空間。
やっぱり、お洒落な場所には綺麗な人が沢山集まる。すくなくとも、この空間に醜いものや汚いものは居ない。それが、一番の俺のお気に入り。




−反省会−
古歌は、中途半端切を学習した、てれってってってぇ〜!あいむらびにっ!!
たららたぁらぁらぁらぁたったらぁ〜、古歌は半端スキルとスルースキルが上がった。
はい、覚えたが最期性質の悪い事を平気でやります。
ちなみに、タツメ=棚機女(たなばたつめ)=織姫ってことです。
もちろん、手先が器用な手作りボーイです。乞巧奠の話をちょっとやってたもんで、七夕関連ってことで。ちなみに、七夕の短冊には芸事の上達をお願いするんですよ。間違っても、お金持ちとか、彼氏プリーズとか、書いちゃ駄目ですよぉ?
最近、非王道だの脇役だのチャラ男だのに嵌ってます。そのうち、書くと思います。だって、最近の王道ちょっと読めないの多いんだもん。わざとらしいぐらいに受けが馬鹿だと萎えます。淫乱馬鹿系は苦手です。