日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

おいでませ、万事屋さん

4月1日 天気 晴れ 記入者:春・夏

サクラ満開の入学式で、今日はお仕事でした。
ほんじつは、新しいバイトの人がいました。
空くんって名前の男の子です。空くんは、お父さんがメンセツをして雇った人です。そんな人は万事屋さんにいないので、逆に空くんはすごいんだと思います。
普通の人が欲しいって、お父さんが言って、それで空くんがきました。
僕も夏も、そんな人は始めて見たので、ちょっと面白かったです。空くんは、とっても優しくて楽しくて、色んな意味で普通の人です。だって、僕と夏が職員だって言ったら、ビックリしたよって笑いました。普通は、子供は雇ってくれないんだよって言いました。でも、ラーメン屋さんの子供とか、お店屋さんの子供とかは、自分の家のお店を手伝うので、いいと思います。
今日のお仕事は、面白いお仕事でした。
今日は、お父さんと、僕と、夏と、きーちゃんと、空くんと、五人で行きました。マリアさんと、瀬名さんと、お留守番です。
マリアさんは、お父さんが拾ってきました。普段は、きゃばくらって所でお仕事してます。お店では、一番人気の夜の蝶だそうです。マリアさんは、すごく優しくてイイ匂いがして、お母さんみたいです。でも、お母さんはマリアさんみたいに、僕と夏に笑ってくれなかったので、やっぱりマリアさんが好きです。それから、お母さんみたいに、僕と夏を怒りません。
瀬名さんは、機械の達人です。コンピュータなら、なんでも作って使えます。でも、お父さんが言うと、瀬名さんは、寄生虫のロクデモナシ、らしいです。でも、瀬名さんもお父さんも笑うので、二人は仲良しだと思います。
あと、瀬名さんはご飯も達人です。
お仕事で、白い服の人をお祝いしました。サクラが綺麗で、沢山人がいて、みんな綺麗な服だったので、入学式だと思います。
僕と夏ときーちゃんは、動物を担当します。お父さんと空くんで、会場を造る仕事をします。そしたら、ハトが糞をして、すごく怒られました。でも、動物が生きてるので当たり前だと思います。お父さんに言ったら、それは正論だけど通用しないよって言いました。お金が減らされて、今回はケチで小さな依頼人に当たったと言ってました。
でも、僕と夏ときーちゃんは、ちゃんとお仕事したから、怒られませんでした。お父さんは、良く出来ましたって、誉めて、頭を撫でてくれました。嬉しいです。
ご飯は、瀬名さんのハンバークでした。お父さんと、僕と、夏と、きーちゃんの四人で食べました。チーズのも好きだけど、パイナップル乗ったのも、食べたいです。
明日は、ちゃんちゃんやき、ってのを作る約束です。でも、ちゃんちゃんやき、って何だろう?って思いました。明日、瀬名さんと、僕と、夏と、作ります。
オムライスは、明後日の約束です。







「業務日誌か、日記か、微妙だろう。」

お父さんこと桜田仁は、煙草の煙を吐き出しながら、真っ黒いノートを眺める。
百円均一で買ってきた黒いノートの表紙、白いインクで書かれた文字は『美無日士』となっている。

「いや、意味解らねぇ。」

おおかたテレビで見た物を真似たのだろう。先ほどまで、同じ顔した双子は真っ黒な子犬とじゃれながら嬉しそうにノートに文字を綴っていた。
その様子を思い出して、桜田は自然と緩む頬を引き締める。こんなニヤケタ面を誰かに見せる訳にはいかない。自分は、あくまで暫定的なお父さんでしかないのだ。
何時か離れていくあの二人に、必要以上に深い思いを抱くことは、出来ない。
薄い紙の上に綴られる、楽しい、嬉しい、面白い、そんな感情。それらを指先でなぞりながら、桜田は祈らずにはいられない。
どうか、あの幼い子供達が、少しでも幸せを幸せと感じられるように。優しさを受けて、優しさを返せる人に育つように。
過ぎた、驕った願いかもしれないが、どうか、人並みの人生を歩めるように。

「お父さん、お風呂空いたよ!!」
「早くしないと、冷めるよ!!」

びしょ濡れで飛び込んできた二人と一匹を追いかけながら、桜田はもう少しだけ、この生活が続けばいいと思っていた。











古歌の懺悔。
昨日思いついて、忘れないうちにノートにメモったネタ。
お父さんは心配性ってのが副題です。
何がしたいのか、古歌も知りません。でも、楽しかったです。