日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

ラフ・メイカー

部屋の中で一人、泣いた。
だって、もう何もかもが気に入らないんだ。

悔しいとか、悲しいとか、むかつくとか、楽しいとか、嬉しいとか、苦しいとか、面倒とか。
いろんな感情が溢れて、涙になって外に飛び出したんだ。
ともかく、泣くしかなかった。
大声上げて、意味のない叫びを上げて、零れ落ちる涙もそのままに。
ただ無心に泣き叫んだ。
こんなに泣くのは、一体何時以来だろう。
年月だけを重ねて、大人になって、感情を抑制する術を身に付けて。
泣くとか、笑うとか、感情のままに作る表情を偽るようになって。
生きるのがどんどん苦しくなった。
胸の内に少しづづ積もっていった言葉にならない思いの欠片。


鏡の中、目を真っ赤に泣き腫らした自分が写って。
八つ当たり紛れに手近にあった空瓶を投げつけたら、鏡も瓶も粉々に砕けて散った。
誰が掃除すると思ってるんだ。
どうせ自分しかいないのに。
あぁ、もうなんで泣いているのかも覚えてない。
荒れ放題の部屋の中。
窓に下げたカーテンは既に襤褸になってるし。
華奢な足が気に入っていたローテーブルは原型が解んないし。
真っ黒な陶器の灰皿は、おそろいのマグカップと揃って床で破片になってるし。
フローリングは傷だらけだし。
もう、何だか余計にむかつく。


そしたら、鍵の開く音。
この部屋の鍵を持っているのは、俺と大家さんともう一人。
勝手に合鍵を持って行ったヤツ。
何時の間にか入り込んで、俺の幸せな孤独をブチ壊したヤツ。


「アンタ、何してんの。」


その顔がムカつくんだよ。
涼しい顔しやがって。
これだから美形は嫌いだよ。
全国の男の子を代表して言うよ。
俺たちの為に音速で死んでくれ。視界から消失してくれ。
綺麗な顔に呆れた表情。
あぁ、おおいに呆れてくれて結構だ。
どうせ、イイ大人がやる行為じゃないよ。中二病だよ悪かったな。
荒らした部屋を片付けるのも新しく整理整頓するのも俺だよ。
じゃ、俺が荒らすのは問題ないだろうが。


「はいはい、気の済むまで泣け。」


ぽふっと、俺の頭を引き寄せて胸元に抱き寄せる。
この身長差にもムカつく。
頭一つ違うってことですか?



「アンタが泣き止むまで、俺が近くにいてやる。」


余計なお世話だ。
俺は一人が好きで、一人で今まで何でもやってきて、こんな時も感情も、一人で抱えて処理してきたんだ。
傍にいてくれなんて、誰が言ってんだ。



「そんな歌、あったよな。」


アンタ、窓割って侵入する気ですか?鉄パイプ持ったアンタなんて、お似合い過ぎて怖えーよ。
リアルに鉄パイプに血痕付着みたいな。
そんなキャラかよ。アンタ、俺に笑顔を持ってきたことないだろう。しかもそれが生きがいとか、どんだけ根暗で暇人よ。
他人の不幸がそんなに楽しいか。
しかも、アンタまで泣き叫ぶの?ウザイんですけど。



「よし。泣き止んだな。」



笑って、人の頭撫でるの止めろっての。
なんだよ、アンタ。
人の領土に侵入してきて、無遠慮に入り込んで、俺の幸せで平和な孤独を返せ。
ってか、アンタ一体何なの?
もう、とにかく部屋片付けるの手伝え。
もう、アンタゴミ拾って。その辺の、全部棄てるから。
あー、それはゴミじゃないから。
ってか、笑ってんなよ。何かムカつくじゃんか。