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日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

遠くになる音

ぼんやりと空を見上げる。
遠くに流れていく白い雲。澄み渡る青空に混ざるオレンジ。
吹き渡る風は春の匂いをつれている。どこか錆び付いたみたいな、妙に生々しい風の匂い。
スン、と一つ鼻を鳴らして灰を落とす。
この季節は好きだけど、どうもムズムズするんだよね。落ち着かない。
冬や秋に感じるあのまったりとした空気が懐かしくなって、夏に感じる生きてるって実感が薄らぐ。
春は活動の季節なんて言うけれど、私はどうもその空気に耐えられないらしい。今年も元気な新入社員がやってきて、会社内でも妙に浮き足立つような感覚ばかりが目立つ。


春は、落ち着かない。


下に視線を向ければ忙しなく動く人の群れと、あちらこちらで誇らしげに枝を広げ花を咲かせる草木。
今年の花見はどこでやるんだろう。新入社員歓迎会を兼ねた花見は、各部署ごとに開催される。
去年は幹事を任されて大変だった。


「鈴音先輩?いないっすか?」

「おー、こっちゃ。」

「今年の花見、先輩参加します?」


顔を除かせた後輩。片手に持った紙の束。あー、今年の幹事はコイツかい。まぁ、中堅社員の仕事だしな。


「参加にしといて。顔出さない訳にいかないし。」

「うぃーっす。これで全員参加っす。」

「そりゃ、ご苦労さん。んで、花見の準備はいいけど仕事は?見積もり出来た?」

「先方に送って返事待ちっす。さっき電話したら仕事早いって褒められました。先輩にもよろしく伝えてくれって。」

「うん。恩田さんは礼儀重んじる人だし、電話したのはポイント高いね。」


ここ最近、ようやくちょっとした仕事なら完全に任せられるようになった後輩。入社当時を考えればずいぶん成長したもんだ。
隣で煙草をくわえる千音寺の顔を見上げる。
私も女性にしたら身長あるほうだけど、千音寺とは頭一つ違う。こうやって隣に立たれると、完全に顔を上向けないと話せない。


「先輩、寝てます?」

「なんだよ、藪から棒に。」

「いや、隈がびっしり。」


ったく、コイツは変なところで目ざとい。化粧で隠そうにも限界があるんだよなぁ。
春めいた陽気と共に、あの夢も加速度つけて鮮明になっていく。
まるでランダムに切り出した、映画のチャプターを適当に見せられるような夢の連続。
疲れるし、何よりも眠った気にならないのが凄く辛い。
夢の中、あの少女と敵対したり仲間になっていたり、自分の感情が振り回されるみたいで気持ち悪いのもある。
はっきりとしない夢。たかだ夢一つにこんなに振り回されるとは思ってもみなかった。


「夢、っすか?」

「夢っすね。やっぱり一度病院行こうかな。」

「それ、病院でどうにかなるんすかね?」

「知らんがな。むしろ、病院行く暇ないってのが本音だよね。」

「・・・先輩、一度その鈴離してみたらどうですか?」


今も、携帯からぶら下がる小さな鈴。
鞄から携帯に移したのは、何だか手放してはいけない気がしたからだ。
仕事でも私生活でも、携帯は必ず持って歩いている。鞄から移した鈴は、今は形を潜めてただのストラップになってくれてる。
千音寺の提案、一度は私も考えた、考えたけど実行出来なかった。取り返しのつかない事が起きそうで踏ん切りが付かなかったんだよね。

とりとめない事を考えてたら、いきなり目の前にぶら下がったマスコット。
茶色のだっらとした顔のクマが、目の前で揺れている。


「なに?」

キイロイトリのがいいですか?」

「いやいや。」


何考えてんだ、コイツ。


「俺のリラックマ千ちゃん一号と交換しましょう。一晩様子見ません?」

「なんだ、そのネーミングセンス零の名前。」


おかしくて、つい笑ってマスコットを受け取る。
顔は似てないけど、このだらーっとした雰囲気は千音寺とよく似ている。
せっかくの申し出、無碍に断るのも悪い気がする。何が変わるとも思えないけど、案外真面目な顔した後輩の気遣いを足蹴にする程私も鬼じゃ無い。


「んじゃ、ありがたく千ちゃん一号借りるわ。」

「んじゃ、俺が先輩の鈴ちゃん預かりますね。」


交換した瞬間、何かがふっと軽くなった気がする。
本当に気分なんだろうけど、常に私と共にあった鈴が手を離れただけでこんなに気持ちが軽くなるものだろうか。


「さて、仕事っすか。」


気持ちと一緒に心まで軽くなったようで、何よりも千音寺の気遣いが嬉しかった。本人には言わないけど。












−反省たーいむ−

ども、古歌っす。
ただ千音寺くんと鈴ちゃんがイチャイチャしてる話が書きたかっただけです。
桜連作・・・えーっと・・・四作目?
もう桜満開だけど。はてなさんのお題桜だけど。
今回は休憩タイムとでも思っていただければ幸いです。
ちょっと更新頻度上げないとマジで夏になりそうな気配が。桜の季節って短いんだよね。
桜の花は咲くまでが楽しくて、咲いたらあっと言う間に散ってしまうんだもん。儚いよねー。
その儚ささえも美しさの要因だとは思いますけど。刹那を愛する日本人の気質に合うのも納得する。
一瞬の美とでも言えばいいのかな?

春休みも終わって、電車の中は新入生とか新入社員とか、そんなのばっかり。五月蠅いなーと思いつつ、そんな集団のきゃっきゃした雰囲気に日々癒やされてます。かわいいんだよ。
ではでは、そんな古歌さんでした。らぶぅー。