日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

夢の中の音

ざわり。風が一陣駆け抜ける。
つられるように振り返る私の横を、風と共に駆け抜ける少女。
背後で響く断末の悲鳴。命を一つ、終わらせた音。


「危ないわよ。ぼーっとしちゃってどうしたの?」


ころころと転がる声。弾む幼い少女の声。
この場面に不釣合な、明るい声。


「なんでもない」


きしりと軋む腕。重い刀を振り払う。
飛び散った血潮が地面に模様を描く。あぁ、この模様を私は知ってる。
これは確か、どこかで見た覚えがあるのに。記憶に霞でも掛かったように思い出せない。ぼんやりと浮かぶ模様。
思い出せない。これは何だっけ。これを、私はどこで見たんだっけ。


「状況は?」

「変わりないわ。どうしても私たちを駆逐したいようね」


もう一度、風が吹き抜ける。美しい少女。澄んだ瞳の中に薄紅に燃える炎の色。重い刀。飛び散った濃い朱。暗く落くぼんだ眼孔。穿った先に生える銀と黒。


「これが散る前に、片が付くかしら」


微笑んで見上げる少女の細い首。真っ白な肌と微かに上がった頤の完璧な美しさに見蕩れる。
美しい、戦場の乙女。畏敬の念を持って、彼女を呼ばれる。


「戦姫、その花は散らない」


そう。私たちを守るこの花は、決して花弁を散らしたりなどしない。
命を永遠に紡ぐ花は、決して散らない。それは、私たちの命。


「そうね。そうだったわね。だから私達は生きているのだもの。貴方は、時としてとても大切な事に気づかせてくれるのね」


微笑む戦姫。つられて笑みを象る私に、戦姫は行きましょうと先を歩く。


「私達異形の鬼は、決して散らないのよ」












ガタっ!と大きな音を立てて椅子が転がる。
周囲を見渡しても、自分以外誰もいない空間。一際大きく響いた音に驚きながら、まずは椅子を元に戻す。
仕様変更があって、そのままデザイン室に篭って。それからほぼ出来上がっていたデザインを変更してプレゼンの資料も作ってたら眠くなって。


「仮眠のつもりだったんだけど」


一時間ほどウトウトしてたみたいだ。
危ない。危うく設計図にヨダレ垂らす直前だった。そして、変な夢のオマケ付きでまったくもって仮眠にならなかった。
ぐいっと背伸びして時計を確認。自転車通勤に切り替えてからは終電の心配しなくて良くなったけど、こうしてついつい残業しては会社に泊まり込みするようになった。
好きでやってる仕事だけど。そして、この仕事の締切は明日の、もう今日か。朝一の会議で使うとか言ってたけど。


「一息入れて気分転換するかなー」


煙草と財布を掴んでデザイン室を出る。こんな夜中でも誰かしら残って仕事しているようで、あっちこっちのオフィスから明かりが漏れてるのがオカシイ。みんな一生懸命仕事してるんだって。
自販機で珈琲買って、ちょっと小腹が空いたけど近くのコンビニまで行く元気ないしなー。どうしよっかなー。


「鈴音先輩、お疲れ様でーす」


喫煙室で一服しようと思ったら、直前でコンビニ袋下げた後輩の姿。


「アンタ、帰ったんじゃなかったの?」

「いやー、帰ったんすけど、先輩まだやってるかなーって。デザイン室覗いたら上着だけあったんでコッチかと」


差し入れですって寄越すのはコンビニ袋に入ったデザートとおにぎり。
コイツ、出来るな。


「ありがと。ちょーど小腹減って」

「だと思いました。仕様書の変更どーです?」

「どーも何も。もう死ねと言うか死ねと言うか滅びろ?的に淡くもない殺意抱くよ」

「ちょ、先輩目が笑ってないです」


突然の仕様変更は良くあることだけどね。
煙草くわえたままだけど、ありがたく差し入れの袋を漁らせていだたく。とにかく、頭が切実に糖分を欲してるよ。


「んー。やっぱりチョコ美味いなー、いいなチョコ」

「先輩、見かけの割に酒は飲まないし意外と甘党っすね」


余計なお世話だっての。チョコと煙草と珈琲と一緒に食べて吸って飲んで、忙しいな我ながら。


「先輩、残りは?」

「プリントアウトして整えたら完成だよ」

「手伝うっす。早く終わらせて朝飯行きましょーよ、朝飯」

「よしっ!特別に何でも奢ってやろう。出来る後輩持つと幸せだなー、私」


夢の残り香を振り払う様に、勢い良く立ち上がる。
取り敢えず残りの仕事終わらせて、朝飯だ。がっつりご飯食べて、通常業務を午前中で終わらせて、家に帰ってゆっくりお風呂入って早めに晩酌して寝よう。
そうして、夢の事は忘れよう。


「あ、先輩。これどーしたんすか?」

「あによ?」

「これ、花びらっすね。この辺に花なんて咲いてましたっけ?」


薄紅の花弁が、一つ。
そして、耳に残る少女の声。



―私達異形の鬼は、決して散らない・・・・。













―反省しつつ廊下で正座―

ども、古歌です。ジャンピング土下座で登場、古歌です。
有言不実行も甚だしい。一週間以上サボってしまったぜ。
あれだよ、全てゲームが悪いんだよ、ゲームが。


更新サボってハマってました。

キングダム ハーツ バース バイ スリープ

キングダム ハーツ バース バイ スリープ

いやー、面白い。古歌さん、キングダムハーツはまったくプレイした事ありません。大昔に妹がやってるのを横目で見てるだけでした。
ので、ぶっちゃけ何の知識も無く中古で安売りしてたってだけで買いました。
初心者にも親切設計。流石スクエニ様です。
とにかく戦闘が楽しいと思った初めてのゲーム。主人公からと思いヴェントス編から。どうにかクリア出来ました。最終バトルは合計で23回リトライしたけどね。
次はテラ編やろうと思うけど、取り掛かる前に更新しろと天の声が(笑)
RPGを面白いと思える程度には成長したんだよ、古歌さん!!
ってな訳で、桜散る前にこの話、何とか完結に持っていかなければ。
ではでは、らぶぅー。