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日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

鈴の音色の意味

小さな鈴。
銀色の、赤い紐でぶら下げた小さな鈴。
この音色が、夢と私をつなげる架け橋だと言うならば、この鈴は果たしてどちらの世界を現実と捉えているのだろうか。



胡蝶の夢って奴ですか。」


昼休み。果てしなく混み合う社員食堂の片隅で、そんな事を後輩に話す私は、多分疲れている。
偶然重なった納期を捌ける程度の能力は培ってきたけれど、身体的にも肉体的にも疲れはピーク。この時期はなおさら、仕事が重なる。
女だから。なんて甘えは通用しない社会。女だろうが、男だろうが、与えられた仕事を行なってさらには自分で仕事を取りに行くぐらいの気概がないと、この社会では生き残れない。
女ってことを上手に活用して生きている同僚もいるけれど、私はそんなに器用じゃない。
目の前の仕事をなんとかこなしていくしか、私には道がない。


「んー、そんな言葉もあったか。」


目の前のミートソースパスタ。社食のオバちゃんに顏を覚えて貰った二年目から、私の皿は常に大盛りだ。
そんなオバちゃんの気遣いに応えるべく、たっぷりとフォークに巻きつけて頬張る。うん、ブレない美味しさに感動。


「先輩、良くそんなに大盛りで食えますね。」
「人間、食事は基本だよ。午後も忙しいんだからね。」
「分かってますよー。」


草食男子。そんな言葉が当てはまりそうな後輩は、サラダをつついている。人事だけど、その量でよくも仕事が出来るもんだよね。


「先輩って、そんなにリリカルな思考も持ってたんですね。文系の女の子が好きそうな話じゃないっすか。」


夢の話をしたのは、誰かに聞いて欲しかったから。かもしれない。
それに、この後輩見た目や言動はともかくとして、頭の回転が早くてキレる。抽象的であやふやな私の話を黙って聞き、なおかつそれに的確なコメントをくれるって所を評価もしてるし、信頼もしている。


「つまり、夢の女の子が現実にリンクし始める。で、先輩はどっちが現実か区別が付かなくなる。なおかつ、その夢は先輩が能動的に作り上げたものでなく、受動的に何かを受け取って再生されている。この場合、鈴が一種のスイッチと同じ意味を持つ。って、感じっすか。」
「感じっすね。」


食事を終えてからは何時もの喫煙スペースへ。
我が社も世の中の風潮を踏まえて、社食や共同スペースは軒並み禁煙となっている。
まぁ、部署によっては喫煙可能な所もあるけれど。悲しいかな私が所属する部署は禁煙派閥が大旗振り回しているもんで。


「先輩、疲れてるんじゃないっすか?最近、休んでないし。」
「ん、それもあると思う。どっかの誰かさんがいい加減一人で仕事をこなせるようになってくれれば、私も休めるけどね。」
「あははは、それじゃ当分無理っすね。」
「殴るぞ。」


地図に残る仕事がしたいって選んだ職種だけど、色々間違えた気がするままに、もう五年。その間に手がけた仕事は、その辺の同僚に比べて桁違いに多い。
それは、私の自慢でもあり自信の素にもつながっている。


「鈴の音が雲るのって、確か悪い気配がいるからですよ。」
「はい?」
「俺、ちっちゃい頃じいちゃんと暮らしてたんすけどね、しかも寺。で、鈴の音ってのは、そのまま心の在り方なんすよ、楽器とかと一緒で。」
「その話、詳しく。」


ちょっと誇らしげに語る後輩は、全然異分野の会社から中途採用で入社した変わりものだ。
道路やダム、トンネルを掘るのが夢だと語った後から、でも何も知らないで関係ない営業の仕事してましたって笑ったとかで。面接官の間でも笑い話にされている。
年上に随分可愛がられ体質で、男社会の建築業界で働く女性を支持する変わり種。


「鈴の音色は、精神面での出来事を反映させるんです。疲れている時は小さくなるし、逆に元気な時は五月蝿いぐらいに鳴る。で、普段と違う曇った音色ってのは、そのまま同じ意味で自分の心が曇ってるってことなんですよ。」
「つまりは何か、私の心が曇っていると。どす黒い暗黒面に染まっていると言いたいのかな?」
「ちょ、先輩怖い。笑顔だけど目が笑ってないっす。」


オーバーリアクションで怖い怖いと騒ぐ後輩の頭を軽く叩いてから、煙草を銜える。
まぁ、心当たりがまったく無い訳じゃない。ちょうど、あの夢を見る様になった頃に大きなコンペがあったし。
凄く自信があるコンペで、無事に通過したことを喜んだのもつかの間。
同期入社で子会社出向からの本部栄転エリート出世街道を爆進している同期入社の馬鹿に、横から綺麗に仕事を掻攫うなんて事をされたのだ。


「仕方ないっちゃ、仕方ないけどね。」


女であることを悔やんだ事はないし、女であることで卑屈になった事もない。仕事は楽しいし、自分の能力を十分に発揮させてくれる上司にも出会った。現状に満足出来ない程、私は薄情者じゃないし。
ま、それと仕事する上での向上心は別物だし。


「それと、もう一つあるっす。」
「んー?」
「自分の中じゃなくて、外に悪い気配がいる時は音が曇るんすよ。」


笑い飛ばそうとして止めたのは、案外真面目な顔で言うから。


「鈴は、悪いモノから護ってくれるお守りなんすよ。で、何か危険を知らせてるのかもっすね。」
「そんなもんかねぇ。」


危険、ねぇ。あの女の子が危険人物って事なのか。それとも、あの子を含めた夢そのものが危険なのか。
もしも、鈴が夢と現実をつなぐ架け橋だとしたら。鈴は夢を見せる事で何かを私に伝えようとしているのか。
んー、考えて解るもんじゃないような気がするけど。


「先輩、気になるなら俺のじいちゃん紹介しましょうか?」
「なんでそこでアンタの爺ちゃんが出てくんのよ。」
「いや、一応寺で坊さんしてるんで。お払い的なモノでもしてもらえば、気持ち楽になりません?」
「ん、考えとく。それから、話聞いてくれてありがとね。」


情けないなぁ。と自分でも思う話を、この後輩は真面目に聞いてくれた。それが、一番嬉しかったのは言わない事にしとこう。調子に乗ってつけあがりそうだしね。


「さて、仕事しようかね。千音寺君。」
「うぃーっす。よろしくお願いします。鈴音さん。」


ふと、ばあちゃんの言葉を思い出す。


―アンタも、アタシも、鈴の音からは逃げられないんだよ






―後悔?いや、痛快!!―
中二病楽しい!!ども、古歌です。
ちなみに、千音寺は「せんのんじ」と読む名古屋の地名だそうです。
んで、鈴音は「すずおと」と読んでくださいな。
この度、ようやく名前決定もとい登場。

私(主人公〉・・・鈴音 エコ
後輩・・・千音寺 敬人

私の名づけ親はしーちゃんです。エコって響きがイイよなって話になり、そのまま流用。あえての片仮名名前です。
ちなみに、後輩くんの名前はヒロトと読みますので。間違えてもケイトと読まないように。
敬うって漢字好きなんだよね。父親の名前もこの字が入ってます。
さて、桜がまったく関係なくなってきた桜連載。もういっそ短期集中連載的な感じでもいいじゃないかって気がしてきたよ。
久しぶりに中二病的な話書くとやっぱり楽しいよね。異世界交流系の話は自分で書いてテンション上がるから好きよ。根っからのラノベ好きファンタジー好きなんです。もちろんSFも好き。
そして、異能力な話も大好きなんだよ。
ちなみに、話内の仕事の話は適当です。ざっくりとしか調べてません。その辺もファンタジーとして読んでね。


あ、ついでに。この冒頭の台詞は花ちゃんの台詞をお借りしました。


これ

花のズボラ飯

花のズボラ飯

夜中に読むな。思わず実践するから。間違いなくやってしまうから。
取り敢えず、卵かけご飯は最強だと言わざるを得ない。
キムチ炒飯は正義!!
ってことで、お腹空いたにゃー。らぶぅー。