日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

舞い散る花

はらり、はらり、はらり。


薄紅の花弁が目の前を塞ぐ中、彼女は真っ直ぐに立っている。
そのスラリと伸びた背筋とか、背中をうねる黒髪だとか、真っ赤に染まった白い着物だとかが、とても美しくて怖い。
彼女は、ただ立っているだけなのに。



「次は?」


うっすらと口元で微笑みながら、彼女は小首を傾げる。
さらりと溢れる黒い髪が、頬を撫でる姿すら艷やかで。魅入って立ち止まったら最期、そのまま時を止めると解っていても魅せられる。


「じゃ、次は私の番ね。」


目前に迫った彼女の顏は美しく、まるで狂い咲く桜の大樹に見えた。






ふいに鳴り響く電子音。
手を伸ばして枕元を探れば、逆さに布団に突っ込んだウォークマン
予約していた目覚ましを止めて、布団の中で思いっきり伸びる。


「・・・夢かよ。まさかの夢オチかよ。」


誰に言うでもなく呟いて、ようやくベッドを脱出。半分よろけながらハロゲンヒーターのスイッチを足で操作。しながら、炬燵の上に置いた煙草を取り上げる。
カーテンを開ければ眩しい朝日が差し込んできて、咄嗟にカーテンを閉めてから自分に笑う。馬鹿か、私は。

痛いぐらいの冷たさを足先に感じながら、風呂場で洗顔。冬場は冷たいタイルを剥がしてしまいたくなる。
不便だ。洗面台が故障して二年。毎年この時期になると直そうと思うのだけど、思うだけけですぐに春が来て夏になる。そうなると、もう直そうなんて気は無くなってしまう。


ベッドから一緒に持ってきたウォークマンで目覚ましと同じ曲を流しながら朝食の準備。
取り敢えず珈琲と、昨晩残った肉じゃがをレンチン。便利だ。電子レンジを発明した人はきっと、ノーベル賞とかもらってるんじゃなかろうか。



「変な、夢だった。」


誰もいない部屋の中、私の声だけが響く。
凄く綺麗な人だった。まるで夢の様な美人。まぁ夢だけど。
寝入りばなに聞いた曲のせいだろうか。
桜の中で微笑む美しい人と、その足元に散った沢山の屍。一瞬でも動きを止めたら死ぬと解っていても、それでも魅せられた。



「まぁ、夢だけどね。」


ふいに思い出す人が死ぬ感触はやたらとリアルだった。経験ないけど。
死体の重さとか、落くぼんだ黒い眼とか、凹んだ腹部とか、それから飛び散った赤。
経験したこともないのにリアルだと感じるのは、夢特有の感触だ。夢の中で疑似体験したことが現実に浮かび上がるのも、何時もの事。便利だとは思うけど、振り払うのは一苦労だったりする。
現実に役立つ疑似体験なら歓迎したけれどね。そんな都合良くいかない。


「そーえば、今年は桜遅いんだよね。」


庭に植えた早咲きの彼岸桜。本来なら真っ赤な花を散らす頃合なのだけど、今年は散らす所か花すら咲いて居ない。
硬い蕾は芽吹かずに、まるで何かを待つように成長を止めている。桜に限らず、今年は冬の花は全て遅い。それだけ寒いってことなのだろうけど。滅多に降らない雪まで降ったことだし。

とりとめない思考を弄びながらも、体は習慣に基づいて行動を開始する。
食後の一服から、歯磨きして着替えして自転車の鍵を掴む。
テーブルに投げ出したままの鞄を斜めに引っ掛けて、最後に煙草と携帯をポケットに。
忘れ物なし、戸締りはOK。前に鍵を掛け忘れて空き巣に入られて以来、戸締りは慎重になった。盗られたものは現金だけだったけど、この空間に知らない他人が入り込んだって感覚が気持ち悪かった。ついでに、仕掛けられた盗聴器とかカメラも気持ち悪かった。

駐輪場で自転車引っ張り出して、今日も元気に走り出す。
車とほぼ並走するようにペダルを踏み込む。
山坂の多い街は、体力トレーニングに丁度いい。ガシガシとペダルを漕いで、三つ目の交差点で赤信号。いつもより少しペースが早かったらしい。

鞄に付けた鈴が、ふいに鳴る。普段は気にしてないのに、何かの拍子で響く鈴の音。釣られて後ろを振り返る。



「え?」



微笑むのは、夢の美人。
そして、降りしきる薄紅の、花弁。



「ちょっ・・・・っ!!」


赤信号が青に切り替わり、動き出す人の波。それに押されるようにしてバランスを崩す。
自転車ごと倒れるのは何とか防いで、伸ばした足で踏ん張る。
もう一度同じ方向を見ても、そこには何も無い。
人どころか、桜の木さえ生えていない。地面に散った花弁も見当たらない。
寝ぼけて白昼夢でも見たか。あれだけ印象強い夢の影響から、まだ抜けてないらしい。無様に転がらなかっただけイイとしよう。
周囲から突き刺さる視線を振り切るように、再びペダルを踏み込む。
そう、あれは夢でしかない。ただの夢なのだ。だから、絶対に気のせいでしかない。



『次は、私の番ね。』


あの声が聞こえた気がしたのも、ただの気のせいなんだ。








―懺悔の時間―

どもー、古歌でーす。
ブッチギリの古歌でーす。


はは・・・あははははははああははははははあははあっ!!
ちなみに、イメージはコチラ。

文句は受け付けないよ。


いやぁ、この曲好きなのよー。で、イメージね。
色んな方向から怒られそうだけど、カッとしてやりました。後悔はしてない。ような気がする。
楽曲から直接イメージしたんじゃなくて、あくまで古歌の妄想ね。
取り敢えず光線銃で撃たれておけばいいかな?
ってことで、いい訳だけして逃げるのだ!らぶぅー。