日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

気付かれなければ犯罪とは立証できないのです。

白いマントを翻して、シルクハットを片手に優雅にお辞儀を。
クラシカルな怪盗ルックは、案外嫌いじゃない。これで、観客でもいれば最高なんだけどね。
基本闇に潜む存在だけど、これでも派手好き目立ちやがりで矜持が高い。
こっそり忍び込んで無粋な、それこそ夢も浪漫もないやり方で盗むのは俺の趣味じゃない。
いまどきそれってどうなの?あるなしで言えばなしだよねって言われそうな暗号メッセージ。警察に送って見るけど、最初はシカトされまくった。ムカついてマスコミに送ってみたら、一気に有名になれた、さすが日本の情報を一手に引き受けてるマスメディア。
今日もご機嫌で、俺はサーチライトを浴びる。スポットライト代わりの白い光は、視界を埋め尽くしてそれでもなお網膜を焼こうとしている。


「怪盗ファントム、只今参上っ!!」


さぁ。今日も俺を楽しませて。
俺だけの為に誂えられた舞台。
盗むものは千差万別。綺麗なものでも、汚いものでも、面白そうなものなら全て俺の獲物。宝石、絵画、彫刻、掛け軸に刀に史跡。盗んで、そのプロセスを楽しみたいだけだから、盗んだその日のうちに返しに行ったり送ったり。義賊でもなんでもない、ただの自覚ある愉快犯です。


「名探偵ってのも、欲しいね。」


別に、身体は子供頭脳は大人ってのじゃなくてもいいけど。
それに、俺は殺された父親の仇を追ってるわけでもないし。


「あーあ、これも外れか。」



最新のセキュリティだと聞いて侵入したけど、案外簡単に入れてしまった。俺の目当てじゃない。つーか、これで最新とか聞いて呆れる。三世代も前ですけど。


「名探偵も出て来る気配ないしなー、事実は小説より奇なりじゃないんですかーっての。」



盗む気も失せちゃって、ついでにやる気もうせちゃって、仕方ないから警察来るまで一服して待ってよーっと。
ちなみに、警察官に知り合いもいません。骨のある警察官もずば抜けて鋭い警察官もいません。そんなんで大丈夫か国家権力。もう少し日本の警察に骨があれば俺もそれなりに楽しいんだけどね。
あ、おまわりさん来たー。


「もうさ、お前らツマンネ。」











で、帰ってきました。ちなみに、帰宅は電車派です。いや、パラグライダーとか考えたけど、思えばあれって結構なお値段するのよね。
盗んだ美術品を売ろうにもそんなコネクションないし、基本返しちゃうし。いや、偽物の場合は鑑定書付けて壊すけど。
この前は、なんだっけ?かきれもん?あ、これドラえもん。柿右衛門の壺って触れ込みなのに偽物でがっかりした。
あ、ちなみに俺の実家美術商なもんで、これでもガキの頃から美術品玩具に遊んでは爺に殴られて大きくなりました。
その爺も二年前に他界して、その息子。俺の親父は堅実なサラリーマンと言うやつでして、残ってた美術品やら何やらを全て寄贈もしくは売買。残った一軒家に家族揃って引っ越したってワケ。
ちなみに、木造平屋でかなり大きなこの家は、昔は栃木だかどっかにあった古民家。爺が気に入って移築してきたらしい。
ちなみに、いわくつきです。
座敷童子が出るとか出ないとか、胡散臭い逸話の多いこの家を、爺はいたく気に入っていた。
親父は絶対に足を踏み入れなかったし、母さんも爺が嫌いだとかで、爺が存命の頃は一度だって訪れたことはない。
俺は、そんな爺が好きだったから遊びに来てたし、いわゆる反抗期の時期には避難場所としてこの家に泊まっては母さんに怒鳴られるの繰り返しだった。
俺の怪盗趣味はそんな反抗期の時に併発した癖みたいなもんで、店で万引きだとか仲間とつるむって事も嫌いだった俺にとって、最高の暇つぶしとして娯楽になった。
爺は薄々感づいていたのか、夜中に戻る俺を見てはさぞ楽しそうな顔をしていたし、時々ドジ踏んで怪我したりした時は黙って手当てをしてくれた。それでも顔は笑ってたけどな。
高校入学してからも俺の癖は直らず、むしろ加速度付けて傾倒。爺め、あの時止めてくれれば良かったものを。孫は立派な犯罪者です。
とりあえず怪盗セットは全て自室の屋根裏に押し込んでから、俺は爺の仏壇がある部屋へ向かう。
爺の写真と一緒に、ばあちゃんの写真。ばあちゃんは俺が生まれる前に亡くなったって聞いてる。



「爺、乗っ取られて二年記念日だ。」


爺の二回忌の法事は一週間目に済んでる。
今でも思い出すのは、両親の変わり身の早さと薄情さ。
爺が気に入って絶対に売らないと豪語していた美術品の数々を二束三文の安値で売り払った親父。
家中を掃除して爺のしみったれた気配を追い出すと笑った母さん。
人間って怖いなー。つか、あの爺がしみったれなら世の中のご老人全て生きる屍だぞ?寝たきりならぬ動いたきり老人だったし。爺死ぬとか、まったく考えてなかったしな。
やっぱさー、爺でも死ぬんだな。


「必ず、見つけてやるから。」


−気が付かれなければ犯罪では、ないのでしょう?−


お生憎様、俺がすべてを聞いてる。
でも、物証はないんだな、これが。
何年掛かるか知らないけど、絶対にあいつらの犯罪は立証してやる。
だから爺、この家に化けて出るなよ。











−反省という名の言い訳−

うん、ごめん。怪盗とか必要ない設定付けたらこうなった。うん、反省は、多分、きっと、そこはかとなく、してるかもしれない。
ってことで、オリジナル。
なぜこうなったし!シリーズです。今名づけました。結構そんな話がボロボロあります。
えへ?