日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

仕事辞めてぇ・・・

毎日毎日、同じ場所に行って仕事して、家に帰ったら飯食って寝るだけの生活。
わずか一行で表せる己の生活にも、だいぶ嫌気が差して五年経ちました。
仕事は相変わらずに適当に、そりゃ五年も居れば人は入れ替わって古参とも呼ばれるようになります。仕事だって、何でもできるようになれます。
でもね、それってただ時の流れってだけなんだと思うんだよな。
対人業務は嫌だけども、慣れればそれなりに楽しさも見出せるようになりまして、バイトから叩き上げで社員に昇格して、給料も安定して、責任もそれなりに増えたけど、それでも自分は変えられなくて、いったい何のために此処で仕事をしてるのかって青臭い疑問も、気づけば消えていた。


春になると、人が新しくなる。
大手のホテルなんてそんなもの。親会社から大量にあふれ出た新人が研修目的で仕事を習いに来る。ゆとり世代だなんだと言われる年下の人間は、とにかく自分とは違う生き物みたいだ。
一言で言えば、若い。そして、純粋だ。
仕事に生きがいを見出すとか、そんなの一ヶ月もすれば理想は消えるよ。
しょせんは雇われ人。一応社員には昇格したけど、自分の直属の上司よりも社歴は長いし、仕事もぶっちゃけ言えば俺の方が出来る。
いや、決してうぬぼれじゃない。バイト時代は何でも屋紛いにいろいろなセクションで仕事してたし、受付にレストラン、予約センターに設備に送迎。今はフロントに落ち着いたけど、いまだに呼び出されば掃除もやるし、送迎もやるし、気づいたらイベント企画なんてのもやってる始末。
話が逸れたが、とにかくそんな俺は今回教育係りの名目で、面倒な新人研修を押し付けられた。あー、めんどい。すげぇめんどくせー。無駄にキラキラした顔で入ってくるのは、新しく配属された五名の新入社員様。
今日もウンザリな一日だ。


「まずは、スーツを脱いでこれに着替えて。」


仕事の基本は裏方から。どんな憧れを抱いて入社したかは知らないけど、俺は言われたことを教えるだけ。
複雑そうな不愉快そうな顔で作業着に着替えた五人を連れて、掃除へ。専門の業者が入る清掃だけど、知っといて損はないと思うんだが。



「これは、俺の仕事じゃありません。」



わーお、文句は一人前に出るんだ。お前の仕事じゃないって、今現在お前は何の仕事もしてないだろうが。
こうして、一人辞めた。上司は、最近の若者は根性がないとかどっかで聞いたような台詞を口にした。



「やっぱり合わないので辞めます。」



だったら就職するなと思ったけど、笑顔を浮かべてそう。とだけ答えた。女の子扱いされたいとか、世の中舐めてると思った。
こうして、二人目が辞めた。これだから女は。とかお決まりの台詞を口にして上司は怒っていた。




「なんで自分が此処に居るのか解からないので。」



なんだその理由。思ったけど口に出さない賢明さを覚えている自分。訳もわからぬうちに三人目が辞めた。さすがに上司に怒られた、俺が。意味不明な理不尽な叱責に耐えれる自分を自分で誉めた。つか、俺何も悪くなくね?
上司の頭は禿げていると、初めて気づいた。若いのに、かわいそう。



「先輩は、大学中退なんですね。」



どうやら馬鹿にされたらしい。早く研修を終えて本店で企画部門に付きたいと話すので、イベント企画に連れて行った。ブライダルのお客様を怒らせて、理不尽な客だと言った。客とは理不尽なものだと言ったら、凄く馬鹿にされた目つきで見られた。
結局四人目は、俺が苛めたとか何とか馬鹿らしい捨て台詞で辞めていった。
上司にしこたま怒られた。ひたすら頭を下げて謝る俺は、馬鹿みたいだと思った。ちなみに上司は、俺が気に入らないらしい。大学中退の癖にでかい顔して威張るなと言われた。そんなつもりはないけど、以後気をつけます。と一回多く頭を下げた。それでも嫌味を言われ続けたけど、生憎仕事に関しては完璧なもんで、ひたすら中退中退と嫌味を言われた。


最後の一人となった新人が、相談があると言ってきた。人に聞かれたくない話と言うので、一緒に食事に行った。そいつが紹介した店は、小汚いけど美味い酒とつまみを出す店だった。気に入った。
有名な大学を出た資産家のお坊ちゃまだと、初めて知った。興味なかったから、履歴書とか斜めにしか読んでなかったし。名前と顔だけは覚えてるけど。俺の記憶力は大学時代に異常と呼ばれるほどだし、教授のお墨付きでもあったから。この記憶力が今の仕事に生きてる。便利だ。


「先輩、マジで俺のこと覚えてないんすか?」


大学時代に、図書館でバイトをしていた。その図書館の、コイツは良く来ていた。こっちから誘って、一回だけ寝た。男に抱かれるのは嫌いじゃない。気持ちイイコト優先して何が悪い。



「俺、このホテルで先輩を見かけたから就職したんです。」



衝撃の告白で、飲んでた酒を噴出した。一の蔵、やっぱり美味い。どんな状況でも、酒の味は濁らずに美味いものは美味い。つまみにと出された焼いた厚揚げも、美味い。
噴出した酒に咽ながら、水を一気に飲み干す。それから、今度は落ち着いて酒を一口。



「先輩、結婚しません?」



もう一度、噴出した。




五人目の新人は、今の所辞める気配がない。それどころか、上司を蹴り落として自分がチーフになりやがった。
五年経っても変化の無かった職場が、六年目にして変化を遂げた。
能力のある者を引き上げて、ホテル全体の売り上げも上昇し、俺の立場も上昇した。



そして俺は、一つ口癖が増えた。





「仕事辞めてぇ……。」

「嫁に来る気になりました?」

「人間辞めろ、お前は。」



あー、マジで仕事辞めてぇ。






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久しぶりのオリジナル散文。
こんな二人が居るホテルなら、毎月泊まりに行くと思う。
そんな自分の思考が相変わらず残念な古歌さん。最近パズルに嵌ってます。
難しい・・・ワンピースのパズル難しい!!