日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

12代目脱走計画−雪都逃げマース−

匡が出かけて一時間。ぼちぼち目がストライキを起こし始める。これ以上書類に向かっていると精神の崩壊を招きそうで、雪都は持っていたペンを放り投げる。五分の一程に減った書類だけど、終わりがまったく見えない。むしろ、見せる気なんかないだろうと雪都は傍らの山を見上げる。
三日程出かけると言った匡の言葉は確実だろう。雪都を執務室に繋ぎとめるために溜められた書類は、真面目にやればきっと三日できっちり終わる量だ。

「脱走防止は解るけどね。実際仕事は山積みだし。」

取り出した煙草に火をつけて、ピラピラと書類を振る。クダラナイ山積みの検案。必要な手続きかと首を捻りたくなるような、中身のまったくないガラクタだ。
異例の本家襲名、まさか一期から本家当主を選出するとは誰も思っていなかっただろう。先代の狸が何を考えていたのか解らないが、雪都の12代目襲名を快く思わない人間の方が多い。宥めて賺して時にはスパイスとして軽く恫喝してみたり、とにかくキャンキャンと吠え立てる馬鹿を押さえるのが先決だ。

「でもね〜・・・飽きるのよ〜。」

毎日毎日毎日毎日・・・執務室の壁を眺めて馬鹿みたいな書類に判子を押してサインをして叱り飛ばして怒鳴り散らして、何でこんな簡単な事が出来ないのだと暴れそうになったことは両手の指では足りなくなってきた。

「っつか、匡さん、いないんだよね。」

怖い怖い最強の保護者は絶賛お出かけ中だ。そんな絶好のチャンスで、雪都が大人しくしている訳がない。
スーツの上着を脱ぎ捨てて、高そうな革靴もぽいっと部屋の隅に放り出す。デスクの一番下の引き出し。限界まで引き出した底板を持ち上げてやれば、立派な二重底になっている。入っているのは、コンバースのハーフカットスニーカー、それから青いタンクトップと黒に星柄が可愛らしい半袖のパーカー。ジーンズに足を通して服を着替えて靴紐をキツク縛る。
仕事で使っている12代目専用の携帯を珈琲に水没させて液晶が消えていることを確認。本体そのものを逆パカしてからデータチップを粉砕する。
カードは足が着くので使えない。一番上の引き出しを開けて、手を突っ込んで机の天板を裏から探ってやれば、ガムテープで貼り付けた封筒。中身はある程度の現金。

「そんでもって・・・。」

机の真下、数箇所を叩いて当たりを付けてから思いっきり踏みつける。カチッと何かが嵌る音、それを確認して隠し扉をスライドさせる。中から引っ張り出した鞄は黒い革製のウェストポーチ。中に雪都の携帯と煙草、それから財布を放り投げる。
最後に気分演出で細身のサングラスを引っ掛けて、支度は完璧だ。
執務室から隣の仮眠室に移動して、大きな白いソファーを引き摺って移動させて踏み台代わりに。エアーダクトのカバーをぶっ壊してから身体を一気に持ち上げて中に滑り込む。細身の人間がギリギリ這いずるスペースを強制匍匐前進で。

「さっすが本家ビル。塵一つないね。」

掃除の行き届いたダクトの中は狭い所を覗けば案外快適に脱出できる。進んで進んで、ようやく見えてきた非常口。

「せーのっ!!」

掛け声一発、組んだ両手を金網へと叩きつける。派手な音と共に落ちた金網と一緒に落ちた雪都は、空中で華麗に一回転を決めて音もなく廊下に着地する。執務室が設置されている最上階は、ほとんど無人状態だ。入れるのは一期メンバーと雪都が設定した数人のみ。ハイテク警備は、外からの侵入よりも内からの脱走に対応して作られている。毎回毎回隙を見ては脱出する雪都の護身用目的に作られた最凶のシステムなのだが、ダクトは盲点だったらしい。

「じゃーね。」

鳴り響くサイレンの中、監視カメラに投げキスを一つ。ヒラヒラと蝶の羽ばたきみたいに優雅に片手を振って、雪都は蹴り飛ばした非常口から飛び出したのだった。













懺悔と言う名の言い訳
古歌の脳内第二段とか言っていいですか?いやね、ちょっと12代目が暴れてたのよ。雪都くん、古歌が〜代目って呼び方に萌えたって理由で書いたキャラです。
原案はずーっと昔からいたんですけど、12代目を襲名したのはまさかの盲点。
一期組って組織の中でもはみ出し者の異端者を集めた集団、そこのリーダをしてる子です。付き合い長いオリキャラだよなー。この子も、小学校かな?確か何か小説読んで思いついた子だったはず・・・多分、きっと、いや多分だけど。
そうそう、今日は仕事の面接でした。テストとか言われて内心パニクッタ古歌さん。エクセルとか、まともに使ったことも習ったこともねーって!!いや、使うけどね?便利だから使うけどね?でも、あれヘルプと首っ引きで使うのよ?そんな特殊操作とか使えないからね?本当に泣きそうになりました。だいたい、課題が曖昧で何を求めているのか焦点が絞れなかったぜ。まぁ、落ちてる気配が濃厚だけどな。朝取り卵のプリンぐらいに濃厚だけどな。
次はカフェの面接だよー。ニートもそろそろ飽きたし、早く仕事を決めなければ。明日は日曜だから休むけどねー。
さーって、雪都くん達を書いた落書きもといネタ帳でも整理しよーっと。