日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

消失願望者の幸福論

例えばの話ですけどね、こんなのはどうでしょう。


何かがあって私の意識さえ失く言葉も視界も総てが消えてしまったら、貴方が止めを刺してくれる。あぁ、そんなの素敵じゃありませんか?もう、想像しただけで幸福なんです。素晴らしい幸福感なんですよ。
貴方が止めを刺してくれて、それから忘れてくれたらもっと幸福なんですけどね。
おや?何をそんな泣きそうな顔をしているんですか?例えばの話でしょうに。別に今すぐ死んでしまいたいなど思っていませんからね。これでも数千年単位で生きているんですよ?
忘れることなどありえない?そうですね、私達は人間とは違った記憶形態を持っていますから、何かを忘れて時間によっての忘却など在り得ない話でしょうね。記憶喪失になった方の話など聞いたことがありませんし。
それでも、私はそれを望むんですよ。綺麗に消えてしまいたいと、出来るなら貴方に消されたいと。
いいえ、一部になりたい訳ではありません。貴方が私を飲み込んで総てを消してしまってくれればそれでいいのですよ。そして、私は誰からも忘れられ記憶の一部にも残らない。
そんな願望を抱くなと?何を望み何を願い何を考えるかは、誰にも干渉出来ませんよ。例え身体を、心を、支配されたとしても、それだけは誰にも干渉出来ないしさせない、最後の砦なんでしょうねぇ。
あぁ、折角のお茶が温くなってしまいましたね。今新しいものと取り替えましょうか。
おや、何を泣いているんですか。本当に身体ばかり大きくて子供ですねぇ。それでは他に示しが付きませんよ?感情等と言う、私達にとっては紛い物の何かを、他者に対して露にするのは感心できませんね。
あぁ、今はまだ死にませんからね。だから、何度も申し上げているでしょうに。私はこれでも爺さんなんですからね、誰が幼い容姿ですか、失礼な。
ほら、お茶を飲んで落ち着いてくださいね。それから、こちら春のお菓子ですから、どうぞ召し上がってくださいね。
えぇ、桜のお菓子ですよ。春ですからねぇ、もうすっかり。
長く咲く桜・・・ですか。それは無粋かもしれませんね。
いいえ、貴方の技術を否定する訳ではありません。美しいモノの一瞬を切り取り保存し愛でるのも、また一つの形でしょうから。
それでも、私はその一瞬が過ぎるのも美しいと思ってしまうんですよ。
儚いって、それが私の感性なんでしょうねぇ。欠けたモノを愛し壊れた物を愛で自ら破壊を起こすのも、私の一面なんですから。それを美しいと呼ぶのは歪んでいるのでしょうか?
桜が散り春が進めば新緑が芽生えますね。それから、季節にしかないモノを楽しみその一瞬を愛しむ、刹那と呼ばれる感情が何よりも心地良い。今を切り取るのも刹那ならば、過ぎ行く総てを在るがままに見送るのも刹那と呼ばれるのではないでしょうかね。
あぁ、お菓子のお替りですか?生憎それしか作っていませんので、私のを召し上がりますか?作るのは楽しいのですが、作っているうちに満足してしまったもので。構いませんよ、私は食い意地を露には出来ませんからね。
えぇ、誉めてますとも。
もしも消えそうでも再び生き返らせるですか・・・なんとも貴方らしいお答えですね。けれども、そうなったら私は私ではないでしょうね。
生き返りたくなどないのですよ。私は私でありたい、ただそれだけの話です。
酷い?勝手?それを貴方に言われるのは心外ですけれど、そうなのかもしれないですね。所詮は、言葉遊びでしかないんですからそんなに真剣になられても困ります。消失願望?あぁそんな言葉がお似合いの遊びですね。








そんな会話を、桜を見ながら考えてました。えぇ、本田菊ちゃんですよ。相手は誰でしょうね。そこまで考えませんでした。
消失願望ってのは、大なり小なり誰にでもあると思います。
古歌の消失願望幸福論は、一人でひっそり消えてしまいたい。気付いたら居なくね?の一言で構わないので、誰からも気付かれること無く消えていけたら、最上なんですけどね。
桜、好きですよ。散り際にひときわ大きく栄える桜は美しいと共に恐怖を与えてくれますからね。ふらりと夜桜を見て、煙草を咥えてブラリ。そんな小粋な風情の似合う人間になってみてぇよ。
本田さんは、きっと煙管愛好なんだと思う。煙管って、結構キツイんですよね。まぁ両切りの煙草と似たようなもんだし。ありゃ吸うって言うよりも香を楽しむものだと思う。
今回の散文は、珍しくタイトルのフレーズが先に出来た。そんで、考える内に菊ちゃんになってた。菊ちゃんって、きっと消えてしまいたいって思う子なんだよ。でも、消えるに消えれない。空気読めちゃう子だからね。
そんな可哀相な頭で妄想してる古歌さんこそ消えてしまえって話です。