日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

三日月さん家の双子

同じ部屋の二段ベッド。俺が上で、夕が下で寝てる。
夕は普段からぼけてるので、上で寝ると普通に落下してくる。それから、俺がずっと上で寝てる。
目覚ましが鳴って、朝が来る。今日は、学校の日だ。夕は学校大好きだけど、俺はどっちでもない。好きが零で嫌いも零。興味無い。勉強も運動も嫌いじゃないけど、別に学校に行ってまでやる理由が解らないし。こんなの、家で一人でも出来るんじゃないかって、思ってしまう。


「夕、朝だよ。」
「うん・・・。」
「起きて。」


返事だけして毛布の中に潜り込むから、無理矢理毛布を剥がしてやる。暫く無言の抵抗で枕にしがみ付いていたけど、寒くて結局起き上がる。拗ねたような夕の顔が好きだから、毎回こんな起こし方。
二人一緒に洗顔とか済ませて、夕が朝食を、俺は洗濯を。家事は一応分担してるけど、俺は洗濯担当。食事や掃除は夕に任せっぱなしだ。


「夜、朝ごはん出来るよー。」


ベランダで洗濯物を干すついでに一服してれば、大声で俺を呼んでる夕。今日の朝ごはんはパンだな。


「煙草、美味しいの?」
「まぁね。夕は駄目だよ?前に盛大に咽たの覚えてるだろ?」


あ、また拗ねた顔。本当に、夕は可愛い。俺の一番大切で一番近くにいる半身だもんね。俺たちは、産まれた瞬間からずーっと一緒に居る。どんな時も、離れる事がない。俺の頭は半分夕とつながってるし、夕の頭も半分俺とつながっている。


「「いただきます。」」


甘くないフレンチトーストに両面焼いた目玉焼きとレタスを挟んで、サンドイッチ。胡椒が利いてて美味しい、夕はやっぱり料理が美味い。オレンジページとか買ってくるし。俺とは反対に、夕は蜂蜜とバターをたっぷり使ったフレンチトースト。朝から良く食べれるなって、いつも感心する甘さだ。


「夕、珈琲お代わり。」
「セルフサービスでーす。」
「ケチ。」


食器を片付けて、一緒に登校。何が楽しいんだか、夕はご機嫌で鞄を振り回して笑ってる。掛けられる声一つ一つに返事をして、笑顔を振りまく夕。俺は、挨拶なんて返さないし、面倒だから黙ったまんま。そんな俺を、夕は良くないって叱るけどね。夕以外に笑いかける気も話しかける気もないもん。


「お早う、三日月夜、三日月夕。」


校庭の人ごみが二分化されて、最強の王様のご登場。


「お早うございます、火村さん。」
「はよっす。」


火村京。この学校に君臨する支配者。生徒会会長の権力を今日も元気に振りかざして歩いてる。俺と夕を簡単に見分けてしまったこの人に、夕はすっかり懐いているし、俺も嫌いじゃない。むしろ、この人は面白いんだ。


「今日は、生徒会お休みですか?」
「うん。今日は書類整理だけ。最近寝ないで仕事してたから。」
「えぇ!!駄目ですよ、ちゃんとお休みしないと。」
「だって、使える人間が少ないから。」
「それでも駄目です。今日は俺と夜も手伝いますから。」


俺は今、猫の前に飛び出して尻尾を振る鼠を見た気分。自分から食べてくれって飛び出す可愛い子ネズミ。


「何か、言いたげだね。三日月夜。」
「・・・夕で、遊ばないでもらえますか。変態。」
「俺は、何も言ってないよ?忙しいって、言っただけ。」
「ふーん、それじゃ、俺が手伝ってあげます。永眠への道のり。」


本当に、この変態ムカつく。ってか、その顔がムカつく。なんだよ、余裕の笑みかよ。ぼっこぼこのぎったぎたにして、その澄ました顔潰して永眠させてやる。


「いいよ。遊んであげるよ、三日月夜。」
「今日こそ、ボコす。」


鞄を落として、背中に仕込んだ特殊警棒のグリップを握り絞める。これ、夕からのプレゼントなんだよね、この子、喧嘩とかあんまり好きじゃないのに、時々すっごいセンスでプレゼント寄越してくる。夕って、案外中身黒いのかもしれない。
硬めにテープの巻かれたグリップは手にしっくりと馴染んでイイ感じ。それに、市販されてる警棒よりもちょっと長めで振り抜きやすい。


「夜、火村さんは強いよ?」
「知ってる。だから、楽しいんじゃん。ちょっと行ってくるけど、夕はどうする?」


本気で殴り合いの出来る相手なんて、そうそうお目に掛かれないからね。


「夕くんは、生徒会室で預かりましょうか。」


もう一人の支配者。有栖川ケイ。俺、コイツ嫌い。嫌いなんだけど、夕は懐いてる。俺たちを見分けたもう一人。でも嫌いだ。なんか腹黒いのを隠して優しいお兄さんですって顔してるのが嫌い。それに、夕が懐いてるのも気に入らない。


「じゃ、お手伝いしながら待ってるね。」
「・・・早目に戻るね。」
「うん。行ってらっしゃい。」


ちゅって可愛い音立ててキスをする夕に、俺もお返しでキスをしてから。
さーて、今日こそあの変態支配者をボっコボコにしてやるんだからな。






三日月さん家の双子。お気に入りです。今回は夜の視点で書いてみました。
今度は三人称で書きたいかな。生徒会とか、一体どこから出てきたのか自分でも不思議です。
むしろ、此処で書いてるキャラに名前が付いたのが不思議です。えーっと・・・多分気紛れとか気のせいとか気の迷いとかかもしれないね。
それにしても、コンビニおにぎりって何でこんなに美味しいのだろう。
鮭握りは直まきよりも後海苔のほうが美味しいよね。
あぁ、お腹減ったな。