日々妄想を逍遥

ダイアリーから移築。中身は変わらずに色々と、あることないこと書き込んでます。

朝日が昇るまで

飽きるほどに互いの体温と肌を貪った。
長く別れて永遠かと思える長いときを互いに待って、今更重なると思えなかった道が交わって。
半身を千切られたかと思えるぐらいに痛みと焦燥を覚えた。
桜の下で奇跡の再開とか、陳腐でお似合いかもしれない。


馬鹿みたいに豪華な天蓋付きのベッド。二人で縺れ合う様に体を投げ出して、目玉が腐って解けるぐらいに眠って、ただ体温を分け合うだけで満足していた。
三日、何もしないでベッドの中でまどろんで惰眠を貪った。
時々起きては目を合わせて囁きあって。子供みたいだ。
それから、眠るのに飽きて起きた。二人で巫戯気ながらバスを使って食事をして、空と大地を眺めて桜を肴に酒を飲んで。
それから、またベッドの中。


当たり前みたいに、アンタは俺に手を伸ばして抱きしめて。
俺も素直にアンタの腕の中へ。まるで、そこが定位置みたいにピッタリと隙間もなく寄り添った。
心臓の真上に耳を当てて鼓動を確認して、それだけで身体の奥に火が付く。なんて容易な身体なんだろう。
始りは、小さなキス。
小鳥の羽が撫でるみたいに、触れるだけの幼いキスを。
じゃれあう感覚が懐かしくて楽しくて、似合わないなと思考の片隅で呟いて。


「キス、好きかも。」
「俺も。アンタとのキスは、好きだよ。」
「それ、自覚して言ってる?」


嵐の中に放り出されたらあんた感じだろう。
舐めて噛んで嬲って齧って千切られるみたい。
入り込んだ他人の体温と舌の感触が気持ちイイとか、脳味噌が沸騰しそうな熱の中で考えた。
それが、マトモな思考の最期。後は、されるがままに全てを受け入れて揺さ振られた。
女みたいな悲鳴と喘ぎと懇願。掠れた喉で要求されるままに言葉を紡いで、身体を支配される。
セックスなんて生温い表現じゃ追い付かない。
喰い殺される獲物は、きっとこんな陶酔を味わうのだろう。
もっと、もっとと手を伸ばせば、確かな感触で繋ぎ止める。その癖、限界を超えて見せろと容赦なく責めてくるの同じ人間。
もう止めてくれと願えば、その言葉ごと口を塞がれて抱きしめられる。



「死ぬかと、思った。」
「まさか、この程度で死ねるか。まだ半分だ。」
「まじ?・・・俺、これ以上は死ねる。」
「まだ、足りない。」
「ちょっと、休憩。」


猛獣みたいに、剥き出しの肩に歯を立てるアンタを押し退けて、シーツだけを纏って冷蔵庫を目指す。
ともかく、喉が渇いた。容赦なく責められて残ったのは、倦怠感と喉の乾き。



「さむい・・・。」


床に触れても、空気に触れても、寒い。
桜が咲けども、夜は寒い。特に、この赤い大地は温度差が激しいのだ。
ベッドの中に戻れば、再びアンタの腕の中。
やっぱり、この場所は気持ちイイ。俺の最高の居場所かもしれない。



「まだやるの?」
「足りない。」
「・・・手加減してください。」
「喜んで。いただきます。」



そんな時だけ真面目な顔して手を合わせるな。笑うから。
ベッドの中、幸せなのか微妙な体温を感じつつ、俺のマトモな思考は融けて消えた。